(太宰の墓の左斜め後ろが、森鴎外の墓。こちらは本名の森林太郎の名が記されてます。太宰は何度かこの鴎外の墓を詣でたそうです。上に見える桜は、太宰の墓の上に見える桜と同じ幹からのびる枝。)
立派な口髭(くちひげ)を生やしながら、酔漢を相手に敢然と格闘して縁先から墜落したほどの豪傑と、同じ墓地に眠る資格は私に無い。お前なんかは、墓地の択(え)り好みなんて出来る身分ではないのだ。はっきりと、身の程を知らなければならぬ。私はその日、鴎外の端然たる黒い墓碑をちらと横目で見ただけで、あわてて帰宅したのである。「花吹雪」