その夜、私は、かなり酔った。しかも、意外にも悪く酔った。子守唄が、よくなかった。私は酔って唄をうたうなど、絶無のことなのであるが、その夜は、どうしたはずみか、ふと、里(さと)のおみやに何もろた、でんでん太鼓に、などと、でたらめに唄いだして、幸吉も低くそれに和したが、それがいけなかった。どしんと世界中の感傷を、ひとりで脊負(せおわ)せられたような気がして、どうにも、たまらなかった。
「新樹の言葉」