「それじゃ仕方が無い。」と苦笑しながら、「仰せに随って、お前の甲羅に腰かけてみるか。」
「言うことすべて気に入らん。」と亀は本気にふくれて、「腰掛けてみるか、とは何事です。かけてみるのも、腰かけるのも、結果に於いては同じじゃないか。疑いながら、ためしに右へ曲がるのも、信じて断乎として右へ曲がるのも、その運命は同じことです。どっちにしたって引き返すことは出来ないんだ。試しみたとたんに、あなたの運命がちゃんときめられてしまうのだ。人生には試みなんて、存在しないんだ。やってみるのは、やったのと同じだ。実にあなたたちは、往生際が悪い。引返す事が出来るものだと思っている。」
「わかったよ、わかったよ。それでは信じて乗せてもらおう!」
「よし来た。」
(「お伽草紙」)